PRIMO AUTUNNO
2026年10月のディナー
AScrigno
スクリーニョ|小箱


Il percorso
- 前菜
秋鰆と本日入荷魚の炙りカルパッチョ
知多牛スジと無花果、栗、タレッジョチーズのカルトッチョ
- パン
自家製パン盛り合わせ
- パスタ
自家製トルテリーニ 水牛リコッタとかぼちゃのアマレット風味
名古屋コーチンのブロード仕立て
- メイン
三河湾産甘鯛のバッカラ詰め オーブン焼き
矢作川手掘りしじみのスープ仕立て
- ドルチェ
クアトロ・フォルマッジョの球体ムース
愛知県産ビーツと熟成柿のティラミス
食後のお飲み物 と 小菓子
7,500円(税・サービス料別)
La storia
小箱にしまわれたもの
Scrigno(スクリーニョ)は、イタリア語で宝箱や小箱を意味する言葉です。箱は、何かをしまっておくための道具。けれど、そこに収められるのは物だけではありません。手紙や記録、思い出、そして誰かが大切に受け継いできた知恵もまた、小さな箱の中に守られてきました。
古代ローマでは、書物や文書などを収める箱を scrinium と呼びました。文字が記された巻物を保管し、持ち運ぶための箱です。今回の「Scrigno」は、そんな箱のイメージを料理に重ねた名前です。何が入っているのか。蓋を開けるように、ひと皿ずつ確かめていきます。
最初のパスタは、自家製トルテリーニ。小さな生地の中には、水牛リコッタとかぼちゃ、そしてアマレットの香りを組み合わせたフィリングが包まれています。かぼちゃの甘みに、アマレット由来の甘くほろ苦い香りが重なる組み合わせは、北イタリア・マントヴァ周辺の詰め物パスタにも見られるものです。食事の中に菓子の要素を取り入れる、土地に根づいた食文化が背景にあります。これを名古屋コーチンのブロードと合わせ、スプーンで味わう一皿に仕立てました。包む生地と、その内側に隠された味わい。小箱を開くような楽しみのあるパスタです。
メインは、三河湾産の甘鯛に、イタリアの伝統的な保存食バッカラ――塩漬けにして乾燥させたタラのペーストを詰め、オーブンで焼き上げます。そこに合わせるのは、矢作川で手掘りされたしじみのスープ。海の魚と干しダラ、川の貝。それぞれの素材が持つ旨味が重なり、愛知の海と川がつながる風土を一皿に表現します。イタリアで長く受け継がれてきた保存食の知恵も、地元の魚介と出会い、新しい表情を見せます。
箱の中身は、開けてみるまで分かりません。料理もまた、名前や素材だけでは伝えきれないものを、一口ずつ明らかにしていきます。包まれたフィリング、魚の中に隠されたペースト、スープに溶け込む旨味。見えないところにこそ味わいの鍵がある。そんな発見を楽しんでいただくためのコースです。